設計図書とは?その重要性や種類、作成手順などについて解説

設計図書は、設計者が作成する重要な書類です。建築物の仕様を明示するために、設計者は詳細な設計をしなければなりません。設計者にとって、設計図書の基礎知識は欠かせないものです。本記事では、設計図書とは何か、設計書との違いや設計図書の種類、作成基準などについて解説します。

設計図書とは

設計図書(せっけいずしょ・せっけいとしょ)とは、建築設計において、建物の設計意図や構造、設備などを示すための仕様書の総称です。仕様書の中には、建物の見た目や使用される材料や施工方法に関する詳細情報も含まれます。設計図書は、設計者の意図を第三者に正確に伝え、施工者がその指示に従って建物を建設するための指針となるものです。そのため、正確で詳細な内容が求められます。

設計図書は、おもに建築における計画と実行の橋渡しをします。正確な設計図書をもとに工事を進めることで、建物の安全性や機能性、デザインの確保に役立ちます。また、予算やスケジュールの管理にも大きく影響し、設計ミスや施工ミスのリスクを最小限に抑える役割を果たすものでもあります。

設計図書と設計図の違い

設計図書と設計図は混同されがちです。しかし、両者には明確な違いがあります。

設計図書は、建物の概観や構造を表す図面で、仕様書や計算書などの文書を含む設計者の意図を伝えるための書類のことです。一方、設計図は、建物の概観や構造を表す図面のみを指し、建築工事を実施するために必要なものです。

建築図面について詳細は、「建築図面とは?図面の種類や図面の基本的な書き方を解説」の記事で解説しています。

設計図書の種類

設計図書は、一般的に大きく4つの種類に分けられ、それらの仕様書をまとめて設計図書といいます。ここでは、「意匠図」「構造図」「設備図」「外構図」の4種類についてみていきましょう。

意匠図

意匠図は、建物の外観や内装デザインを表現した設計図書です。建物のデザインや間取り全体の形状を示します。
たとえば、以下のような書類が挙げられます。

  • ✓ 建築概要書
  • ✓ 仕上表
  • ✓ 配置図
  • ✓ 求積図
  • ✓ 平面図
  • ✓ 立面図
  • ✓ 断面図
  • ✓ 矩形図
  • ✓ 平面詳細図
  • ✓ 展開図
  • ✓ 建具表
  • ✓ 天井伏図

構造図

構造図は、建物の骨組みとなる構造体の配置、寸法、使用される材料を示す設計図書です。建物の安全性と耐久性を確保するための重要な情報を記載します。
たとえば、以下のような書類が挙げられます。

  • ✓ 基礎伏図
  • ✓ 床伏図
  • ✓ 梁伏図
  • ✓ 小屋伏図
  • ✓ 軸組図

設備図

設備図は、建物内の電気、給排水、空調、ガスなどの設備の配置と仕様を示す設計図書です。機能的な居住空間を実現するための設備が、どのように組み込まれるかを記載します。
たとえば、以下のような書類が挙げられます。

  • ✓ 電気設備図
  • ✓ 給排水ガス設備図
  • ✓ 空調設備図

外構図

外構図は、建物の外周部に関する計画を示す設計図書です。アプローチ、庭園、塀、植栽など、建物を取り巻く環境の設計に関する情報を記載します。
ここに含まれる書類は外構図のみで、建物とその周辺環境を計画する際に使用されます。

設計図書の作成基準

設計図書の作成には基準が設けられており、基準は国土交通省の「建築工事設計図書作成基準」で定められています。ここでは、設計図書作成における基本製図、そして設計図書の保存期間について、国土交通省の「建築工事設計図書作成基準」を参考にしながら、その概略をみていきましょう。

基本製図

基本製図については、以下のように定められています。

【用紙】
原図の用紙サイズは、JIS Z 8311(製図-製図用紙のサイズ及び図面の様式)のA1またはA3を使用し、長辺を横方向に使用して、輪郭及び表題欄を設けます。
表題には、設計者等表示欄、工事名称、図面名称、尺度、担当部局名、図面番号を記載します。これらの図は、平面図、配置図、案内図等は、図の上方を北に配置します。
立面図、断面図等については、上下方向を図面の上下に合わせます。より難い場合は、上下方向を図面の左右方向に合わせ、左を上とします。

【文字】
文字は「漢字」「かな」「アラビア数字」「ローマ字」を使用し、外来語はカタカナを使用します。文字のフォントはゴシック体を使用します。(CADデータの交換標準に支障が出ないように、ソフトウェア特有のフォントは避けます)
A1サイズの用紙に記載する文字の大きさは、次のように設定してください。

文字パターン 文字高さ 文字幅
一般 4.0mm 以上 3.5mm 以上
タイトル 10.0mm 以上 8.0mm 以上

【線】
線の種類は、以下の5種類を使用します。

  • ✓ 実線
  • ✓ 破線
  • ✓ 点線
  • ✓ 一点鎖線
  • ✓ 二点鎖線

A1用紙に記載する線幅は、極太線、太線及び細線の3種類を使用します。
ハッチングを施す線の間隔は以下のとおりに記載します。

  • ✓ 平行線:線間隔を線の太さの3倍以上
  • ✓ 密集する交差線:線間隔を線の太さの4倍以上

また、塗りつぶし及びスマッジングは行いません。

【尺度】
尺度は、以下の13種類とし、各図または表題欄に記入します。

1/1 1/10 1/100 1/600
1/2 1/20 1/200
1/3 1/30 1/300
1/5 1/50 1/500

【寸法等の表示】
単位はミリメートルで記載して単位記号は省略します。ミリメートル以外の場合は、単位記号を記載します。寸法は、寸法線に添えて横書きにします。

そのほか、寸法線や「表示記号」記号などは細かく定められていますので、詳細な記載方法や図表例については、国土交通省の「建築工事設計図書作成基準」をご覧ください。

設計図書の保存期間

設計図書は、建築士法に基づき「制作日より15年間」保管する必要があります。仮に保管義務を違反した場合は、最大30万円の罰金が課される可能性があるので注意しましょう。

保存期間が定められている理由は、多くの建築物が15年を超えて利用されるため、増改築時に設計図書が必要になるからです。設計図書を長期間、半永久的に保管することが推奨されています。

SketchUpで設計図書を作成

作成基準に基づいた設計図書を、ソフトを使って作成すると効率的です。また、デジタルデータとして作成した設計図書は、長期間の保存・保管にも適しています。

3DモデリングソフトSketchUpでは、付属のLayOutというアプリケーションを使うことで3Dモデルを挿入し、2D図面を作成することができます。ひとつのモデルから、平面図や立面図といった複数の図面を作ることができる点は効率的で大きなメリットでもあります。3Dモデルから平面図・展開図を作ることができるので、図面にくい違いが起きないことも利点です。

LayOutにはExcel表の挿入や、寸法、文字の入力、線や図面記号の書き込みなど、設計図書の作成に役立つ機能が備わっています。設計図にはなりますが、SketchUpとLayOutを使った図面作成の方法をユーザー様がウェビナーでご紹介してくださいました。詳しい操作についてはこちらをご覧ください。

LayOutの活用事例はこちら

設計者の意図がしっかりと伝わる設計図書を作成しよう!

設計図書は、設計者が施工者に意図を伝えるための大切な仕様書です。設計した建物のデザインや構造を表す図面の他に、詳細な仕様や計算書などの文書も含みます。設計図書をしっかりと作成することで、設計者と施工者のコミュニケーションがより円滑になり、スムーズな施工につながりますので、設計者は設計図書の意義やルールを理解しておくことが大切です。

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