建設DXとは?課題を解決する建設DXのメリットや活用される技術などを解説



近年、ビジネス環境にはデジタル技術やデータが用いられ、業務環境が大きく変化しています。対面での業務が主流の建設業界も建設DXへの取り組みが必要になりました。DX化に向けた基礎知識や導入メリットなどの情報を収集している担当者も多いのではないでしょうか。本記事では、建設DXとは何なのか、建設業界の現状の課題や建設DXを導入するメリット、そこに用いられる技術などを解説します。

建設DXとは

建設DXとは、建設業界のワークフローにデジタル技術を取り入れることで業務を効率化し、建設業界の変革を図ることです。そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を用いて、企業の業務や人々の暮らしをよりよくする取り組みを指す用語です。建設業界でもDX化を推進することで、大きな変革が期待できます。

建設DXが注目される理由

建設業界では、人材不足や労働時間の負荷軽減に対応する手段の一つとして建設DXが注目されています。

建設業界は特にDX化が進んでいない業界です。DXの遅れは、コロナ禍での業務を難しくした側面も持ちます。また、日本で深刻化している少子高齢化問題は、建設業界においても人材不足を引き起こしています。

対面での業務が一般的な建設業界が、どのようにしてDX化を進めていくのかも、建設DXが注目されている理由の一つです。さまざまな課題を解決へ導くためにも、建設DXに取り組む必要があります。

建設業界の課題

建設業界は今、さまざまな課題を抱えています。ここでは、各課題について詳しくみていきましょう。

人材不足

多くの業界での課題でもある人材不足は、建設業界も例外ではありません。建設就業者は年々減少しています。

国土交通省の調査によると、平成9年には685万人いた建設就業者も、平成22年には498万人、令和3年には482万人にまで減少しています。さらにその年齢の割合をみると、55歳以上が35.5%、29歳以下が12.0%と高齢化が進行していることがわかります。

出典:国土交通省:最近の建設業を巡る状況について

働き方改革による負担軽減ができていない

働き方改革によって、令和3年度の全産業の総実労働時間は1632時間となり大きく減少しました。

しかし、建設業においては1978時間と、全産業と比べて約2割長いことがわかっています。また、令和3年の年間出勤日数についても、全産業平均が212日であるのに対し、建設業は242日と就業日数が多いのです。

これは、働き方改革による労働の負担軽減ができていないということです。DXへの取り組みの遅れが、労働時間の負担軽減を妨げる一つの原因になっています。

出典:国土交通省:最近の建設業を巡る状況について

生産性の低さ

建設業デジタルハンドブックによると、建設業における2021年の生産性は2,944円/人・時間ですが、全産業は4,522円/人・時間です。これは、建設業の生産性が低いことを表しています。

建設業界は、人材不足や進まない建設DXによる業務の非効率により、生産性も低下している可能性があるといえるでしょう。

出典:一般社団法人日本建設業連合会:建設業デジタルハンドブック

建設DXを進めるメリット

建設DXに取り組むことで、建設業界の課題解決につながります。ここでは、建設DXを進めるメリットをみていきましょう。

省人化が可能

デジタル技術を導入することで業務プロセスが自動化されたり、ロボット技術の導入で人的な労働力に依存する業務が大幅に削減されたりするでしょう。これにより省人化が可能になり、人材不足の課題解消を助けます。

また、作業環境の改善や労働者の負担も軽減されるため、作業の効率化も期待できます。作業が効率化されれば工期の短縮も見込めるでしょう。

多様化する働き方への対応

建設DXにより、業務全般にデジタル技術が導入されます。

たとえば、クラウドサービスやモバイルデバイスなどの活用で、場所や時間を選ばずにできる業務が増えます。また、遠隔地からの作業が可能になれば現地への移動が不要になり、働く場所に柔軟性も生まれるでしょう。建設プロジェクトで作業する労働者が柔軟に働ける環境が整えられるということです。

情報の共有

クラウドサービスやWeb会議などを導入すれば、プロジェクトに関連する情報をリアルタイムで共有できます。現場と遠隔地によるリアルタイムなコミュニケーションも可能です。

また、情報はクラウドサービス上で共有できるため、関係者が必要な情報を必要なときにアクセスして確認できます。これにより、意思決定のスピードも上がり、プロジェクト進行の効率化につながります。
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生産性の向上

生産性の向上が期待できます。デジタル技術の導入で作業効率を最適化して無駄を削減することで、作業プロセスの改善が可能です。

たとえば、ダムや道路、橋梁などの構造物のデータなども、3Dモデリングソフトを用いて設計し、デジタルデータとして作業メンバーで共有できます。さらにWeb会議システムで現場と遠隔地をつなげば、デジタル化された図面を確認しながら、遠隔地にいるメンバーとも効率よく打ち合わせや業務の調整が可能になります。

建設DXで用いられる技術

建設DXへの取り組みで意識すべき技術には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、建築DXで用いられる技術をみていきましょう。

ICTやクラウドサービス

ICTとはIT機器と情報通信技術を利用したデジタル技術のことです。

ICTを利用すれば、スマートフォンなどでクラウドサービスに接続してデータを共有したり、Web会議を行ったりできます。また、パソコンやタブレットなどのデバイスからインターネットを介して、遠隔地にある重機や機械を操作したり、法律に則った飛行可能な状況下でドローンを飛ばしたりすることも可能です。

AI(人工知能)

AI(人工知能)は、機械学習を通して自主的に物事を学び判断をするコンピューターのことです。

AIに建築業界の技術やノウハウを学習させることで、従来は人間にしか作業できなかった工程や判断をAIに任せることも可能になります。AIも省人化や作業の生産性を飛躍的に向上させる技術の一つとして、今後広く活用されるでしょう。
3Dモデリング作成のAI活用について、「AIで3Dモデリングができる?AIを活用するメリットや注意点、生成AIツールの種類を紹介」の記事で解説してますので、あわせてご覧ください。

ドローン

ドローンとは、無人航空機のことを指します。近年、ドローンの活躍の場は広がっており、カメラを搭載したものや荷物を運ぶものなど、各用途に合わせた機能を持つドローンが登場しています。

建設業界では、カメラを搭載したドローンで構造物を上空から測量したり、人が入れない場所、危険な場所をドローンで撮影して遠隔地から視認したりするなどの活用が考えられるでしょう。ドローンでの作業は、遠隔地からでも行えるため、離れた場所にいる技術者が作業に参加することも可能になります。工事現場の測量、点検作業や進捗確認にも活用できるでしょう。

BIM/CIM

BIM/CIMとは「Building/ Construction Information Modeling」の略称です。建設業界にて用いられるワークフローのことで、生産性向上や品質向上を目的とした全体の取り組みのことを指します。

BIM/CIMを活用して3次元データを導入することで、事業プロセス全体の関係者と情報共有が容易になります。たとえば、情報の変更などが行われた場合にもスムーズに最新の情報を共有でき、業務の効率化に役立つでしょう。

BIM/CIMについては、「BIM/CIMとは?導入メリットや活用シーンについて解説」にて詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

建設DXの導入事例

建設DXへの取り組みにはさまざまなメリットがあり、国も推進しています。

前述のBIM/CIMについては「2023年までに小規模を除く全ての公共事業にBIM/CIMを原則適応」が国土交通省により決定されました。また、建設現場の生産性向上を目標にしたプロジェクトの「i-Construction」も進んでいます。
たとえば、施工ステップでの4D表現や、3Dデータと点群データを統合し、構造物の維持管理にBIM/CIMを活用している事例もあります。これは、3Dに時間情報を加えた4Dデータを使って、施工が進む様子を可視化し、施工や維持管理に活用するものです。

BIM/CIMの活用例の詳細については、「万国津梁のくに発! 3D測量と3Dモデル統合によるBIM/CIMデータ活用戦略」をご覧ください。
また、i-Constructionの事例については、「今から始めよう! 測量座標対応SketchUpで 実践する普段使いのi-Construction」で紹介しています。

上記の事例はいずれも、3DモデリングソフトのSketchUpで3Dモデリングを行い、さらにプラグインを導入することで建設DXに取り組んでいるものです。

SketchUpはグラフィックカード搭載のパソコンが必要※1ですが、ソフト自体の動作が軽いことも特徴です。また、多くのプラグインがあり、追加することでSketchUpの機能を拡充できます。座標を測量座標に切り替えることや、等高線から地形を作成するといった、建設業界においてSketchUpの活用範囲を広げることができるプラグインもあるので、建設DXへの取り組みに活用しやすいソフトウェアだといえます。

座標の切り替えができる「座標スイッチ」についてはこちら、等高線から地形を作成できる「Fredo6」はこちらをご覧ください。

※1:SketchUpの動作環境については、こちらをご覧ください。
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建設DXの技術の中でも自社の状況にあった方法を選択しよう

建設DXは、建設業界のさまざまな課題を解決する取り組みとなります。デジタル技術による省人化は人材不足を補い、業務効率化による生産性の向上を期待できます。建設DXに取り組む際には、自社の状況や業務に適した技術を取り入れていきましょう。

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