JLGアーキテクツ:サステナビリティをデザインに組み込むための5つのヒント
ノースダコタ州グランドフォークスにあるノースダコタ大学のGorecki Alumni Centerは、
ノースダコタ州で最初のLEEDプラチナプロジェクトです
年間1,000億ドル以上の建設を手がける世界最大級の建築・エンジニアリング(A/E)企業20社のうち、15社が「2030チャレンジ」を採用し実施しています。Design Futures Councilがデザイン業界のリーダーを対象に行った最近の調査によると、米国内の建築事務所の約40%がこの「2030チャレンジ」を採用しているという調査結果が報告されています。建築事務所がすべてのプロジェクトにサステイナビリティを取り入れるにはリーダーが積極的にその変化を支持し、実現する必要があります。
調査によると、サステイナブルなデザインを提供することで建物のオーナーは、運営コストの削減や、生産性に影響を与える居住者の満足度の大幅な向上など、金銭的および非金銭的なビジネス上のメリットを得ることができます。つまり建築当初のコストの増加があっても、その後にそれ以上の財務上のメリットを得られ可能性もあります。
アーガイルビルのデザインは、JLGアーキテクツ、グランドフォークス、ND
このような多数の利害関係者たちの利益をこれらのプロジェクトで実現させることこそ、デザイン会社にとっては仕事の再受注につながります。これらの結果を踏まえるとサステナブルデザインがビジネスの発展に大いに貢献していることを示したと言えます。
ND州グランドフォークスにあるJLGアーキテクツのオフィス。
ワークステーションエリアを見下ろすコラボレーションゾーンとハドルルーム(小会議室)。
Sefairaによって促進されたアクティブなデザインを示している。
JLGアーキテクツは1989年に設立され、150人の従業員が所属している北米に13のオフィスを構えている建築デザイン会社です。JLGアーキテクツはヘルスケアセンター、企業オフィス、空港ターミナル、教育施設からスポーツ会場まで、さまざまなプロジェクトでAIA賞を多数受賞しています。また、ノースダコタ州初のLEEDプラチナビルをはじめ、研究センターから住宅開発まで幅広いプロジェクトでLEEDゴールドおよびシルバーといった素晴らしい認証を受賞しています。現在、グランドフォークスの自社オフィス(上図)は、Living Building Challenge Full Certification、Fitwell、LEED Platinum、AIA Framework for Design Excellenceなどの卓越したエネルギー性能を追求しています。
JLGアーキテクツ・ミネアポリス・オフィス。
St.Anthony Fallsを見下ろすコラボレーションゾーン、左手にはフリーアドレスのワークステーション。
JLGの仕事において、ビジョンと建築価値を追求し、インパクトのあるリーダーシップを組み合わせることでその卓越性が認められます。そこで、JLGのサステナビリティの第一人者であり、サステナビリティ・オフィサーでもあるPatrick Thibaudeau氏に、JLGがどのようにしてビジョンと価値を各チームメンバーの設計プロセスに反映させることに成功したのかについてお話を伺いました。サステナビリティを実践と過程にうまく組み込むための5つのヒントをご紹介します。画像はすべてJLGアーキテクツの提供です。
目次
「なぜ」を見つけよう。サステナビリティが重要な理由
JLGの主たるビジョンは “Design for Life(人生設計) “です。これはデザインとその実現スキルが個人と個人を取り巻くコミュニティとの懸け橋になることです。このビジョンとはデザイン、コミュニティ、周囲との関係、資産管理、そして威厳という5つのコアバリューによって支えられています。 JLGはこれらの5つのコアバリューを実現するには各人の経験を向上させることが不可欠だと考えています。それらの実現には居住者の健康、健全、公平、回復力に加えて、エネルギー、炭素、水といった更なる居住環境性能向上のためのデザインを行い、周辺社会、組織、個人のために経済的な繁栄を達成することが必要である考えています。
これらの目標は当社の30年の歴史の中で常に存在しています。創業者が体現してきたものであり、今ではチームメンバーそれぞれがビジョン、価値観、アプローチを受け入れ、すべての利害関係者の生活をより良いものにするために、すべてのプロジェクトで追求すべき実行可能なステップを理解できるよう文書化され受け継がれています。
持続可能性を日常的に実践する
ビジョンと価値を実践するために、私たちは “この志が各人のデスクの上でどのように見えるのか?”と問いかけました。価値観は各人または各プロジェクトの日々の実践に結びつかなければなりません。
この取り組みの一環として、JLGは「Architecture 2030」の参加に同意し署名しました。年に一度だけ報告書を提出するのではなく、これらをプロジェクトのプロセスに組み込むことを推し進めました。私たちは、2030年報告書に記載するべきすべてのプロジェクトでエネルギーモデルを作成し、AIA framework for Design Excellence (FDE-10) スプレッドシートを完成させるという、これまでの常識を覆すような取り組みを行うことにしました。2020年6月にSefairaを全社に導入したところ、9月末にはすべてのプロジェクトに対してFDE-10スプレッドシートが作成、「Architecture 2030」報告対象のプロジェクトとしてパフォーマンス目標が設定されたエネルギーモデルが作成されました。スタッフ全員がSefairaのトレーニングを受け、約90日間で100件以上のエネルギーモデルが企画され、現在では約200のエネルギーモデルがあります。
現在、すべてのプロジェクトは、FDE-10高性能プランとエネルギーモデルから始まり、各モデルにはネットゼロデザインのオプションがあります。
私たちは段階的な改善を目指し、特定のプロジェクトだけに焦点を当てるのではなく、すべてのプロジェクトで分析を行いました。各プロジェクトにはパフォーマンス分析を担当するチームメンバーが任命されています。AIAフレームワークの10項目すべてに高めの目標を設定し、それらはお客様に検討していただくための貴重な選択肢として提供されています。このような総力を挙げた取り組みの結果、2020年の報告書において、「Architecture 2030」のベースラインと比較して55%のエネルギー削減を達成しました。
さらに、チームメンバー全員が優れたデザインを提供することに取り組んでいます。2020年秋に実施したスタッフクイズでは回答者の100%がEUI(Energy Use Intensity)の略語を知っていました。
【設計者が知っておくべき6つの指標についてはこちらをご覧ください】
建物の外壁のエネルギー性能を最適化するための重要な要素を理解しています。それぞれが典型的なプロジェクトの目標EUIを知っており、ゼロベースラインツール、Sefairaのエネルギーおよび昼光シミュレーションプラグインを自席で利用しています。JLGはSketchUp用のSefairaプラグインを起動する独自のスクリプトを作成し、設計の開始時と継続時には常にSefairaプラグインが起動するようにしました。
JLGでは得られた教訓を将来のプロジェクトに適用し、財務的なROIを明確化しています。
「我々は1年足らずで200近いエネルギーモデルを作成しました。これらの経験は設計の改善や前向きな財務的リターンなどに大いに役立っています。ある例では機器の寿命が30年経過した時点で、20万ドル以上の純然たる収益がROIとして予測されています。Sefairaを使用することで、性能が形状に反映されることがわかりました。」
成功への準備
エネルギーモデリングの専門家は、詳細なエネルギーモデルを完成させるために設計士に7,500〜40,000ドルを請求しますが、一般的な考え方においてエネルギーモデリングを作成することは通常、設計に遅れをとり進捗が遅れるので、その価値が限られたものになってしまいます。 JLGでは建物の性能をおまけのように考えるのではなく、業務の一貫として捉えています。
“建物をパンケーキのように設計し、後からサステナビリティシロップをかけるのではなく、我々はすべてのプロジェクトにおいて最初からサステナビリティを設計の生地に混ぜ込んでいます。このことがシロップ症候群を終わらせたのです。”
JLGは、すべてのお客様に手頃な価格で優れたデザインを提供することを目指しています。そのためにはデザイン分析を迅速かつ反復的に行うことが不可欠です。それは、チームにとって時間とコストの両方を節約できるからです。サステナビリティという考え方は優れたデザインと切り離せないものだと理解しています。
初期段階のコンセプトモデルを設定し、予測されるエネルギー使用原単位(EUI)の目標値を設定するのにかかる時間はわずか1~4時間です。 JLGは通常、設計を最適化するために設計段階ごとに2〜8時間を費やしますが、これは数週間または100〜200時間かかることもある旧式のエネルギーモデリングに比べてはるかに少ない時間です。
JLGは豊富なエネルギーモデルのデータベースから学んだ、建築基準法のベースラインや最適化のための最善の措置を実現するプリセットを含むスターターファイルを定義しました。 このファイルでは細長いフロアプレートと奥行きのあるフロアプレートといった異なるマスキングタイプや、さまざまなオリエンテーションオプションを検討しています。これにより、どのような種類の要素に注意すべきかを早い段階で把握することができます。
次に、外装の仕様、照明の電力密度、そしてネットゼロエネルギーオプションに貢献するHVACソリューションの影響を調査します。これらの情報をもとにJLGではネットゼロ目標の可能性と価値、そしてこれらの計画により総建築コストがプラスになることを示す財務的な投資回収について、顧客と話をすることが可能になります。つまり選択肢と価値を提示することで、顧客との会話がより有用なものになります。
サスティナブルデザインは単なるチェックリストではありません
サスティナビリティはしばしばチェックリスト的なアプローチに陥りがちです。JLGは結果に焦点を当て、より良い結果をもたらす反復的かつ統合的なアプローチを適用することでそれらの水準を高めています。まずプロジェクトの目標を定義し、その後に積極的に追求するべきすこし高めの目標をさら作成します。
テクノロジーが生き残り、普遍的なものになるためには、速くて比較的安価でなければなりません。
SketchUpとSefairaはどちらも速く、比較的安価で柔軟性があるので普遍的なツールになる可能性が十分にあると感じています。
「このツールを使ってどこまでできるか」という問いに対して・・・SketchUpではアイデア出しから開発、そして日照時間の最適化までを行うことができます。設計プロセスのより深い部分でSketchUpモデルを活用するために、IDFファイルをエクスポートしたり、施工ドキュメント作成時にSketchUpファイルをRevitのリンクファイルとして使用したりしています。迅速かつ適応力のあるスキルを活用することで施主は物件により高い価値を見出すことができます。
業界の課題を克服する
建築においてはサステナビリティつまり環境に配慮するという考え方が、デザインを実現するための大きなハードルとなっています。 Patrick ThibaudeauとJLGチームは、卓越した高性能デザインとネット・ゼロ・ビルを特別ではなく標準とすることを目指します。「できないと考えるのではなく、できると理解し、信じることが必要です。 より良い、よりサスティナブルな結果を得るためにデザインの限界を超えることができると信じれば、私たちはより良い結果を得ることができます」。
持続可能性を実践にうまく組み込むための5つのヒント
マウントレイル・ウィリアムズ電気協同組合事務所 ND州ウィリストン市
- 何をすべきかを知っている
情報があっても行動に結びつかないことが多々あります。何十年もの間、専門家はスピーカーの話を聞き続けていましたが、聞いていることが学んでいるように錯覚してしまいます。 JLGは”Doing is knowing(何をするべきかを知っている) “という学習方法に焦点を当て、進歩を加速させてきました。実際に行動することで、理解の壁を取り除き、学習を加速させることができます。 - 常にオン
JLGはパフォーマンス分析を呼吸のようにしています。それはただの出来事です。「私たちは使用する製品が正しい行動を後押しことを期待しています」。 例えば、JLGはSketchUpの起動時にSefairaを起動する独自のスクリプトを用意しており、エネルギーと太陽光のプラグインが自動的にオンになるようにしています。これにより、設計作業を行う際には常に分析結果を念頭にいれて作業するようになっています。 - リアルタイムの設計分析
JLGでは専門家チームが性能シミュレーションを行うのではなく、各チームがSketchUpモデルを用意し、専門家チームがサポートする形でSefairaを用いて解析を行っています。利用するSketchUpモデルはプロジェクトの進展に合わせて常に最新の状態に保たれ、毎月または各設計段階の終了時にレビューされます。 - ベストプラクティスの定着と反復作業の標準化
JLGはWebアプリ「Sefaira」の中で、主要な建物タイプごとにスターターモデルを定義しており、誰もがゼロから始めることなく簡単に導入することができます。初期設定ファイルには最善の措置を実現するパラメータがプリセットとして含まれています。 - 限界を超えることの常態化
我々経営陣はチームが自分たちのアイデアをテストすることを奨励しています。「やってみて、何が起こるかを学ぶ」ためには極端なモデルで限界を試すことを許可、奨励しています。このようなテストを通して、設計者はR値、日照、マスキング、方位、空気の侵入、ガラスの性能など、さまざまな建築要素の重要性と感度の両方を学び、理解することができます。
すべてのプロジェクトに対応できるお決まりの台本はありませんが、プロセスの一部は繰り返し利用されて日々のワークフローに組み込まれています。適切な考え方とアプローチ、ツールと知識があれば設計者は利害関係者の利益のために最低基準をはるかに上回る成果を出すことができます。理想的な結果を念頭に置いてスタートするだけで、オーナーに素晴らしい建物を最高の価値で提供することができ、総コストを削減し、コミュニティにも有用な影響を与えることができます。
プロジェクトスポットライト: JLG本社(ノースダコタ州グランドフォークス)
JLG Architects Office, Grand Forks, ND.
Sefaira社のデイライトシミュレーションを用いて、フリーアドレスのフレキシブルな
ワークステーションを設計・改良しました
主な設計目標
- 90%以上の居住者満足度
- ネット・ゼロ・エネルギー:消費するエネルギーよりも作るエネルギーの方が多い
- ネット・ポジティブ・カーボン
- ウォーターバランス:水収支:基準となるオフィスビルと比較して、水の使用量を40%削減。灌漑設備もありません。
- 廃棄物ゼロ:建設時の廃棄物の再利用
- 材料からのレッドリスト有害物質ゼロ
- 純正収入
パフォーマンス目標
- LEED CI プラチナ
- Fitwell 星2つ
- リビング・ビルディング・チャレンジ完全認証
- AIAフレームワーク・フォー・デザイン・エクセレンス・ハイパフォーマンス
業績目標は達成できましたか?
- プロジェクトは建設中であり、目標達成に向けて順調に進んでいる。
SketchUpとSefairaを使うことで実現しました:
- 時間の節約 – デザイン分析が格段に速い
- 資本コストの削減
- 運用コストの削減 – 30年後に232,000ドルのプラス収益を予測
- 同等のオフィスビルと比較して、資本コストを3%削減しながら、高い品質のビルを実現
JLGアーキテクツについて
JLGアーキテクツは1989年に設立され、150人の従業員によって所有され、北米に13のオフィスを構えています。JLGアーキテクツは、ヘルスケアセンター、企業オフィス、空港ターミナル、教育施設からスポーツ会場まで、さまざまなプロジェクトでAIA賞を多数受賞しています。また、BD+Cのトップ150アーキテクチャー・ジャイアントの1つ、Architectural Recordのトップ300アーキテクチャー・ファーム in the United Statesの1つにランクされています。さらに言えば、JLGは従業員満足度でも高い評価を得ています。Inc. 誌では「アメリカで働きたい会社ベスト50」に選ばれ、AIAではインターン育成プログラムが評価され、Outstanding Firm Awardを受賞しています。
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吉匠建築工藝 社名:株式会社吉匠建築工藝 URL:https://www.yoshisho.com/ 本社:東京
<株式会社アルファコックス>
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